用語解説
(参考文献;200クラシック用語辞典〜立風書房〜)

【あ行】

《アゴーギク》
 楽譜に指示されていない微妙なテンポの変化で音楽をより生き生きとさせる手法、現象をいう。

《アンコール》
 フランス語で"encore"もう一度の意味。演奏会の予定プログラム終了後に演奏者が、客席からの拍手喝采に応えて演奏するもの。
毎年恒例の、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでは、アンコールとして「美しき青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」が演奏されるのがお約束となっている。

《暗譜》
 楽曲を暗記してしまい、「楽譜」を見ずにそらで演奏すること。今日ではピアニストやヴァイオリニスト等の独奏者は暗譜で演奏することが多い。指揮者でも暗譜で指揮をする人もいる。
今世紀最大の指揮者の一人、トスカニーニは強靱な記憶力を誇り暗譜で指揮をしたが、ある演奏会でど忘れをしてしまった。その直後に引退をしたのは有名な話である。

《オリジナル楽器》
 作曲家が生きていた当時そのままの楽器、あるいはそのコピー。バッハの時代のヴァイオリンは、現代のヴァイオリンと弓の形状が違い同時に3つの弦を弾くことができた。


【か行】

《海賊版》
 演奏者やその契約するレコード会社の許可を得ることなく発売されるレコード、CDなどをいう。かつては録音状態や盤質も悪く通販を中心に細々と販売されていたが、現在では大型店でも堂々と販売されており、市民権をえたかのようである。
正規録音が非常に少ないクライバーの海賊版が発売されるとマニア間では話題騒然となる。

《カストラート》
 去勢された男声歌手のこと。もともとは女人禁制の教会の聖歌隊で高い声のパートを歌うために必要とされた。現在では、カウンターテナーがファルセットを使ってそのパートを歌う。

《カデンツァ》
 おもにコンチェルト(協奏曲)などの曲の節目にあって、演奏者が技巧の妙技を披露するために設置された自由な部分をさす。バロック時代は完全に演奏者まかせだったが、モーツァルトやベートーヴェンの時代になると作曲者がカデンツァも書くようになり、ロマン派以降では作曲者自身、作曲者お墨付きの初演者が創作したカデンツァが演奏されるのが普通になった。
モーツァルトのピアノ協奏曲第20番はベートーヴェンのお気に入りの曲だったらしく、第1楽章と第3楽章のカデンツァをベートーヴェン自身が作曲しており、現在の多くの演奏者もこのカデンツァを演奏する。

《キャンセル》
 予定されていた演奏家が、そのコンサートやオペラなどへの出演を取りやめること。指揮者のクライバーやピアニストのミケランジェリは常連(?)である。
ただ、キャンセルは思わぬ新人が出現する場合もあり、場合によってはチケットの払い戻しをするよりも得(?)をすることがあるかも....

《巨匠/マエストロ》
 おもに芸術方面での大家をさす。例)マエストロ、カラヤン。

《コンサートマスター》
 オーケストラの第1ヴァイオリンの首席奏者。略してコンマスと呼ばれることもある。
ベルリン・フィルには複数人のコンマスがいるが、そのうちの一人が、日本人の安永徹氏である。これは階級社会のクラシック界においてはとってもすごいことである。


【さ行】

《作品番号》
 作曲者あるいは出版社が作曲順に作品に付ける通しナンバー。opusを略したop.で表記される。
例)ベートーヴェン作曲 交響曲第5番ハ短調 op.67
ベートーヴェン以前の作曲家の多くは自分でナンバーをふることは少なかったので、後世の研究者が整理してナンバーをふったりしている。
バッハの作品はBWV番号、モーツァルトの作品はK(ケッヘル)番号、シューベルトの作品はD(ディートリッヒ)番号を併用して呼ばれる。

《スタインウェイ》
 ハンブルク(ドイツ)の高級ピアノメーカー。ニューヨーク製もある。ベーゼンドルファー(ウィーン)と人気を2分するが、シェアは圧倒的にスタンウェイの方が高い。ホロヴィッツはニューヨーク製スタンウェイを使用しており、海外へのコンサートにも自分のピアノを持ち歩いた。
日本のヤマハとカワイも近年台頭してきている。ちなみに、コンサート用のグランドピアノは2,000万円以上もする高価なものである。

《スタッカート》
 音と音の間を切って音をあける奏法、または歌唱法をいう。

《ストラディヴァリウス》
 弦楽器(おもにヴァイオリン)の名器の名前。17世紀半ば〜18世紀前半にかけて、父子2代にわたっておよそ3千台のヴァイオリンが製造された。これに魅了されたヴァイオリニストは家屋敷を売り払ってでも手に入れるほどである。
グァルネリウスもまた名器である。

《総譜》
 スコアと呼ばれるオーケストラやオペラの全部の音が記載された楽譜。これを各演奏者が見て演奏すると、10秒に1回くらい一斉に演奏をやめて譜面をめくらなければならないので、各演奏者は自分の楽器の音だけを書き写した「パート譜」と呼ばれるものを使用している。
もちろん、指揮者は総譜(スコア)を見て指揮をしている。(暗譜で振る指揮者も多いですが...)
交響曲等の総譜(スコア)は大きな書店に行けば手に入ります。これを見ながらCD(レコード)を聴くと指揮者の解釈の違いがわかりおもしろいです。

《ソナタ形式》
 主題の提示部(第1主題、第2主題)、展開部、主題の再現部という構造を持つ純器楽的な楽曲形式。第1楽章にこの形式を持つ多楽章(おもに3楽章)の独奏器楽曲をソナタと呼ぶ。


【た行】

《タイトルロール》
 オペラで主役の名前がタイトルとなっている作品の、その主役のこと。モーツァルトの「フィガロの結婚」のフイガロ、ヴェルディの「アイーダ」のアイーダ、ビゼーの「カルメン」のカルメンなど。

《タッチ》
 おもに鍵盤楽器で鍵盤を押し下げる「打鍵」のこと。
ピアノはヴァイオリンなどの弦楽器と違って、「ド」「レ」「ミ」の音は猫が鍵盤の上を歩いても出すことはできるが、音色はタッチで大きく変わってしまう。

《タンギング》
 管楽器の演奏技法の一つで、舌で空気の流れを止めることによって音を区切っていくこと。

《チューニング》
 楽器が持つ音程のためのメカニズムを微調整して正しい音が出せるよう準備すること。合奏の場合にはピッチを統一する意味がある。
オーケストラではコンサートマスターの合図によりオーボエ奏者が一定のAの音を出し各自がそのピッチに合わせることによって行われる。

《長調/短調》
 近代調性音楽の旋律的・和声的基礎となる2種類の音階、もしくは旋法。
長調(長旋法)は主音上に長3度、短調(短旋法)は主音上に短3度の音程を形成する点で、対比的な性格を持つ。
一般的に、「長調」は明るく快活で、「短調」は暗く悲痛な感じがする。

《トリル》
 代表的な装飾音符の一種で、主要音とその2度上の補助音とが急速に交替するものを言い、旋律線を流麗にしたり、リズムや和声に変化を与える。

《トレモロ》
 弦楽器の弓を急速に上下して、一つの音を反復させる奏法。


【な行】


【は行】

《パート譜》
 一段の楽譜に総譜から自分の音だけを書き写した楽譜。ただ、曲によってはたまにしか音を出さないティンパニなどの演奏者は、パート譜を見ているだけではいざ叩くときに一拍早く入ったりすると大変恥ずかしい思いをする。

《ピッチ》
 音の高さ。オーケストラが演奏会前にオーボエ奏者が鳴らすA(ラ)の音は通常、440HZか442HZが採用されている。ウィーン・フィルやベルリン・フィルは445HZとも446HZともいわれる高いピッチを設定している。
これとは逆にバッハ、ハイドン、モーツァルトの時代は415HZや430HZと低く、オリジナル楽器やその演奏者は当時の低いピッチを基準にしたりする場合が多い。

《ピッツィカート》
 弦楽器の弦を弓で弾かずに指ではじく奏法のこと。ピッツィカートの奏法にも右手の人差し指で弦をはじいたり、左手のあいてる指で弦をはじくなど数種類ある。

《ヴィブラート》
 「ふるえる」と言う意味で、声や音を美しく響かせるために用いられる。弦楽器では弦の上の指を振動させ音程に幅を作ることで得られる。

《ヴィルトゥオーゾ》
 ラテン語のヴィルトゥス(virutus)から出たイタリア語で、本来の意味は芸術や道徳に優れた知識を持つ人の称であったが、現在では芸術、とくに音楽で技巧の優れた演奏家に冠せられる。

《ファルセット》
 裏声で高い声区を歌う技法。

《ブーイング》
 観客が不満の気持を表現するために主として低い声で「ブ〜」と叫ぶこと。私はまだ演奏会でしたことがない。(笑)

《ブレス》
 息継ぎのこと。声楽、管楽器のテクニックの一つで呼吸をいかに音楽のフレーズを壊さぬ場所、速さ、量で行うかが課題である。

《平均律》
 1オクターブを均等な12半音に分ける調律法で、今日広く一般的に用いられている。

《ボーイング》
 運弓法、いわゆる「弓さばき」のこと。ちょっとしたボーイングの違いでおどろくほど音が変わってしまうため、オーケストラではこのボーイングを合わせることが重要である。


【ま行】

《ミス・タッチ》
 演奏家が誤って楽譜に書いてある音と違う音を弾いてしまうこと。主に鍵盤楽器演奏者の行為に対して使われる。ミス・タッチは無い方がいいが、楽譜どおりの演奏がすべて良いかというとそういうわけでもない。

《名曲》
 名高いすぐれた楽曲。

《モティーフ/動機》
 ベートーヴェンの「運命」の「ジャジャジャジャーン」というような象徴的な楽句のこと。「ライトモティーフ」はワーグナーの楽劇における特殊な動機で、ある人物、行動、感情などを象徴する楽句をさす。


【や行】


【ら行】

《ライナーノーツ》
 LPのジャケット裏や見開きの内部に書かれたり、CDのパッケージに封入される曲の解説書のこと。執筆者はおもに音楽評論家、音楽学者等であるがその出来具合にはかなりばらつきがある。ビギナーにとっては曲のうんちくを覚えるにはもってこいのものである。(私も結構これで聴き所を覚えました。)

《リハーサル》
 複数の演奏家が参加するコンサートのために、参加者が1カ所に集まって実際に音を出して練習をすること。オーケストラの定期公演などで通常2〜4日、オペラなどではさまざまなリハーサルが長期にわたって組まれる。ゲネプロ(ゲネラル・プローベ)は装置、衣装などを実際につけて本番通りに行われる通し練習のこと。

《レガート》
 「結びつける」「つなぎつける」の意で音の間をなめらかに連続させて演奏する。

《レパートリー》
 演奏家がいつでも演じられるように用意している演奏曲目。

《廉価版》
 新録音新譜の通常価格(フル・プライス)より低い価格で販売されるCD・LPのこと。LP時代の廉価版は盤質がフル・プライス盤よりも悪い場合があったが、現在はCDの時代なのでそのような心配は少ない。クラシックビギナーには、安価にかつての名演奏がそろえられる利点もあり是非お薦めします。


【わ行】